

この度、ARTDYNE では山田七菜子・ミノリ・荒木萌花・宇田和花によるグループ展「現れの形象Ⅱ」を開催いたします。本展は、2021年に開催された「現れの形象」に続く第2弾として企画されました。第1回では思想家ハンナ・アーレントの「現れの空間」という概念を手がかりに、アーティストが社会の規範にズレや裂け目を見出し、新たな価値観を提示する試みが展開されました。今回もその問いを引き継ぎつつ、4名の女性作家による多様な平面表現を通して「現れること」の意味をさらに掘り下げていきます。
山田七菜子は「存在」と「不在」のはざまを往還し、物質としての絵画を通じて「世界そのものの表され方」を問い直します。ミノリは点と線の構築と解体を軸に、可視と不可視の世界を往来し、私たちの現実を形づくる関係性の網目を浮かび上がらせます。荒木萌花は感情と記憶の嵐の中で、絵を描くことによって自らの居所を確かめ、その証左を画面に刻みます。宇田和花は、色彩の層や筆跡のリズムによって流動的な画面を立ち上げ、描く行為そのものの痕跡を作品として提示します。
それぞれ異なる手法や視座を持ちながらも、4人の作家たちは「現れること」と「表すこと」のあわいに立ち上がる新しい価値観を探り出そうとしています。この機会にぜひご高覧、ご紹介のほどお願い申し上げます。
アーティスト・ステートメント
【山田七菜子】
形象はひとつの姿として絵画を取り繕う。
形象は私を騙し、間違った道を指差す。でも案外間違った道など無いのだ。目的地がわからないのだから。
形象は私の道連れとなって彷徨う役割を終え、輝く。
絵画は形象を描くためではなく、空間(世界)を希求する行為になるが、描く行為に変わりない。どう足掻いても、描くという行為は自分自身が選択し能動的に描くということだ。
描かれることによって意味を失った形象の残骸が、空間(世界)を支えている。
瓦礫の隙間にイメージが表れ住み着く、「絵画がイメージを匿う」と私は言ったりする。
どう在るのか。どう無いのか。いつも振り出しから。
【ミノリ】
私の作品は「点と線」という考えを中心に展開しています。
点はどこにでもある小さな存在で、つながると線となり、形だけでなく見えない関係や思いも映し出します。制作では、意図的に、あるいは偶然に点を置き線を引くことで、世界の構築と解体を試みています。線は分け、つなぎ、境界を示し、交差や絡み合いの中で新しい意味が生まれていきます。
点と線は思考や感情、記憶にも潜み、内と外の世界は互いに響き合いながら現実を紡ぎ出していきます。私はこの探求の中で、日常に潜む微かな変化や気配を静かに見つめ、世界の繊細なつながりを感じ取ろうとしています。
【荒木萌花】
私はいつ何時でも、感情と記憶の嵐に呑みこまれたまま 。
「私は今、どこにいるのか」
そんな中、絵を描くことで、嵐を止めることはできなくても、嵐の姿だけでも確かめようとしました。
しかしそれはきっと、嵐の中の自分を見捨てたくなかったから。
そうして描き続けるうちに少しずつ、自分のための時間を持てるようになりました。
私が絵を描く理由は、そのわずかな時間のため。ただ、それだけのことだったのです。
【宇田和花】
色彩が画面内で重なり、筆跡のリズムによって独自の空間を生み出す画面構成を模索しながら油画作品を制作している。近年の作品は筆跡に意識を向けその軌跡と絵具の厚みは、描く行為そのものの痕跡として層をなし、一瞬一瞬の変化を捉え、おり重なる色彩と画面の流動的な流れ、それら全てが交錯する多彩な作品を目指す。また、小作品は支持体そのものに厚みを持たせ、側面や物理的な奥行きを画面構成に取り込むことで、空間にせり出す存在として提示している。色彩が画面上で混ざり合いながら境界を揺るがし、新たな広がりを生み出していく。
山田七菜子|Yamada Nanako

1978年生まれ
主な個展
2011
「魔法をかけたかった」Gallery HAM,愛知
2011
「眠る為のより深い化粧,別の日の為のイミテーション,歩く為のほくろ」
Gallery HAM,愛知
2012
「絵画,それを愛と呼ぶことにしよう vol.1山田七菜子」gallery αM,東京
2013
「かわいい血,かわいい土地」Gallery HAM,愛知
2015
「海」Gallery HAM,愛知
2016
「あかるい春」Gallery HAM,愛知
2017
「泣きっ面」Gallery HAM,愛知
2019
「あのもんらあ」Gallery HAM,愛知
2019
「project N 77」東京オペラシティアートギャラリー, 東京
2020
「夢題の無」Gallery HAM, 愛知
2021
「おばけの絵は絵、絵のおばけは絵」 Gallery HAM, 愛知
2022
「騙くらかせ 石を裏返せ」 アトリエ,大阪
2022
「気泡/Maybe Phantom」 Gallery HAM,愛知
2023
「NANAKO YAMADA solo exhibition」 MARGIN, 東京
2024
「祈り探し」Gallery HAM, 愛知
主なグループ展
2017
「ART NEXT 寓話とアポリアとサピエンスと 絵画の壁」電気文化会館,愛知
2018
「VOCA展2018」上野の森美術館,東京
2019
「情の深みと浅さ」ヤマザキマザック美術館,愛知
2021
「現代美術の作法2021」 極小美術館, 岐阜
2023
「Collector’s Collective vol.7 Osaka」 TEZUKAYAMA GALLERY/ VIEWING ROOM , 大阪
受賞
2018年
VOCA奨励賞
パブリックコレクション
第一生命保険株式会社、愛知県美術館
ミノリ|Minori

1992
奈良生まれ
2016
大阪芸術大学 デザイン学科 VAコース 中退
2020
東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業
現在は東京を拠点に活動。
主な活動履歴
2025
ASYAAF(Gallery LVS/ソウル) 2025 グループ展『doors』(biscuit gallery/東京)
2024
個展『雨は一杯のよろこびをもたらす』 (YTF GALLERY/台北)
ドローイング展『6 drawings』(biscuit gallery/東京)
個展『むすんで、ひらいて、ゆらめいて』(chignitta/大阪)
WALL NEXT『名前のない光』(日本橋髙島屋美術画廊/東京)
2023
個展『あなたのいる地点』(GALERIE OVO/台北)
ART TAIPEI(GALERIE OVO/台北)
ART FORMOSA(YTF GALLERY/台北)
個展『空という言葉を忘れて空を見ることができますか?』 (biscuit gallery/東京)
2022
個展『&』 (Hidari Zingaro/東京)
ART TAIPEI(GALERIE OVO/台北)
GEISAI#21 大谷工作室賞/ob賞/村田森賞 審査員賞トリプル受賞
2021
FACE展2021 入選
2021
個展『リトル・ヴォイス』(biscuit gallery/東京)
受賞歴
2022
GEISAI#21 大谷工作室賞/ob賞/村田森賞 審査員賞トリプル受賞
2022
FACE展2022 入選
2021
FACE展2021 入選
2019
FACE展2019 入選
2018
SHIBUYA AWARDS 2018 入選
2016
トーキョーワンダーウォール 入選
2014
大阪芸術大学 作品展示プロジェクト京2014 副機構長賞/AICS賞 デザイン学科部門
2013
大阪芸術大学 art kish!2013in喜志 グランプリ受賞
2011
二科大阪展 第9回ポストカードデザイン大賞(一般の部) 大賞受賞
第12回インターナショナル・イラストレーション・コンペティション ベスト・イン・ア
ート賞受賞
第24回日本の自然を描く展 佳作賞
2010
“世紀のダ・ヴィンチを探せ!”高校生アートコンペティション2010 ダヴィンチ大賞受
賞
荒木萌花|Araki Moeka

1999年
東京都出身
2023年
武蔵野美術大学造形学部油絵学科油画専攻 卒業
2025年
武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻油絵コース 修了
グループ展示
2023年
鈴画廊『RED展』
2024年
鈴画廊『春のあしおと展』
2025年
鈴画廊『春のあしおと展II』
受賞
2024年
アートオリンピア入選
宇田和花|Uda Waka

2025年
京都芸術大学 油画コース 卒業
京都芸術大学大学院油画分野在学中
展覧会
2022
「蒙昧故の等身大」春巻スタンド ラップ & ロール
2023
「Explore Kyoto vol.1」ギャラリー寛
2025
「Cafe Kolm vol.13」Gallery de Galant