「交換ノート」岩崎奏波・梅原義幸二人展

このたび、ARTDYNEは梅原義幸と岩崎奏波による二人展「交換ノート」を開催いたします。二人は多摩美術大学の同期です。出会って以来、それぞれの表現を探求し発表を続けています。本展は、友人同士である二人の交流と対話の過程を可視化する試みです。

本展のタイトル「交換ノート」は、学生時代に友人同士がノートを交換しながら自由に言葉や絵を綴るように、二人の思考や制作態度が相互に作用し、発展していくことを象徴しています。二人が異なる表現方法を持ちつつ、それぞれのテーマに対して独自のアプローチを重ねる中で、作品は変化し、思考が交差し、新たな視点が生まれます。本展では、そのようなプロセスの中で生まれた作品を展示いたします。異なる視点と表現が交わることで新たな芸術の可能性を探る本展を通じ、鑑賞者にも二人の対話に耳を傾け、作品と対話する機会となれば幸いです。

 

【作家によるテキスト】

2人展の開催が決定したとき、お互いの作品に対しての理解を深めたいと思い、何気なく交換ノートを始めてみました。ノート上でやりとりすることで、普段の制作との共通点やお互いの絵画に対して、話し言葉での会話とは別角度から理解を深めることができました。今回の展示は、交換ノートからお互いが感じたことが出発点になっています。

 

ノートは「閉じる」ことができます。そのため私はこの交換ノートの中に独立した空間があるように感じていて、私は梅原くんとその空間に隠れて会話しているような感覚がありました。別空間につながるゲート、身体的な距離感、閉じた空間での対話、などについて考えて描いています。(岩崎奏波)

 

岩崎さんとの交換日記は2人で一つの物を作り上げていくかのようでした。ゆっくりと薄い層を重ねて一枚の絵を描くように、数ヶ月にわたり1ページずつ交互に書かれ、郵送の往復で少しずつ汚れていくノートには互いの時間とイメージが蓄積されていました。(梅原義幸)

 

 

【作家プロフィール】

岩崎奏波|Kanaha Iwasaki
1996年沖縄県生まれ。2022年多摩美術大学大学院 美術研究科博士前期課程絵画専攻油画研究領域修了。記憶の変化や時間の流れ、物語がどのように絵画空間の中で語られるかを探求する。自身と他者、作品との関係性を問いながら、絵画空間が可能にする表現の可能性を追求している。

主な個展に、「おぼえている?」 GALERIE OVO 十方藝術空間(台湾,台北, 2024)、マドリードでのアーティストインレジデンス成果発表、LEA-Lab of Experimental Art(スペイン、マドリード、2023)、「motion・decoration」THE LOOP GALLERY(東京、2023)、「月はとなりの部屋に」KATSUYA SUSUKI GALLERY (東京、2023)など。主なグループ展・アートフェアに、「水面を覗く」下北沢アーツ(東京、2023)、「IN THE LOOP」(THE LOOP GALLERY、東京、2022)、「3331ART FAIR」(3331アーツ千代田、東京、2022)など。

 

梅原義幸|Yoshiyuki Umehara
1997年群馬県生まれ。2020年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。ペインティングナイフを用いた厚塗りの技法を特徴とし、重厚な画面の中に独特の色彩感覚と軽妙なタッチが共存する。風景を擬人化したモチーフを主に使い、「想像上の世界」と「現実世界」の狭間に存在するかのような情景を描く。ほのかなユーモアや温かさ、時には毒を内包する梅原の作品は、観る者個人個人が持つ記憶や物語を呼び起こしていく。

主な個展に、「ものと私」(ARTDYNE、東京、2023)、「透明な鏡」(Night Out Gallery、東京、2023)、「山の日」(ARTDYNE、東京、2023)、「FACE」(GALLERY ROOM・A、東京、2022)、「持って戻る」(ARTDYNE、東京、2022)。主なグループ展に、「15th 極寒芸術祭」(てしかがえこまち推進協議会、弟子屈川湯温泉、2025)、「Group Exhibition “DRAW LINES & SHAPES IN MY MAPS”」(T&Y Gallery、LA、2024)、石井海音との二人展「やまびこ」(ARTDYNE、東京、2024)、「Into the Unknown」(YK Presents、ソウル、2023)など。主な受賞歴として「Idemitsu Art Award 2023」入選。