古川諒子個展「火星にコンピュータの本は2つしかない」

2023.06.17 – 2023.07.09

古川諒子個展「火星にコンピュータの本は2つしかない」

この度、ARTDYNEは古川諒子個展「火星にコンピュータの本は2つしかない」を開催いたします。

1994年生まれの古川の制作は、まず言葉を選びとるところから始まります。対象となる書籍から文を無作為に繋ぎ合わせたそのイメージを元とし、主に綿布にアクリル絵具を使って制作します。

絵具を綿布に染み込ませるステイニングという技法では、結果として画面上は支持体と被支持体が一体化します。鑑賞者は、作品画像を目にすることによって(例えば、かすかな筆の痕を目で追っているのか、それとも、支持体の布それ自体を見つめているのか)、その人の「見る」という身体行為にかすかな違和感を生じさせます。古川の作品は、人間の視覚システムと錯覚の問題を顕在化を試みていますが、興味深いことに偶発性から生まれるある種の必然への信頼を保有しています。

今展にて、古川は1月の広島での個展「太平洋は銀製」の再現インスタレーションを試みると同時に、新作も含めて展示販売いたします。どうぞこの機会にぜひご高覧、ご高評いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

▢個展に寄せて

古川諒子は言葉を起点に絵画を制作している。例えば今年初めに開催した個展「太平洋は銀製」(2023年1月13日-2月5日、ヒロセコレクション、広島)に際しては、まず受験期に使用していた英単語帳の単語用例を文節ごとに切り刻んだ後、無造作に繋ぎ合わせて再構成し、《ジーンズをはいてアメリカから引っ越す》、《私は若いときの長靴に似ている》のようにどこか不可解なテキストを生成した。それらは作品のタイトルであると同時にイメージの源泉にとなる。自分でも思いがけないテキストからモチーフの姿や場面について丁寧に想像を膨らませるそのプロセスは、小説を読むときの状況を思わせる。さらにこのとき、素材の特性や温湿度の影響を受けやすくコントロールが難しいステイニング(キャンバスに絵の具を染み込ませる技法)を用いる。自分の意思を超えた偶然性を取り入れることや、絵の具のにじみによって生まれる曖昧さを含む古川の絵画は、鑑賞者それぞれにも想像の余地を与えてくれるだろう。

笹野 摩耶 / 広島市現代美術館学芸員

作家略歴

古川諒子|Ryoko Furukawa

2022

広島市立大学大学院 芸術学研究科 油絵研究 博士前期課程 修了

2020

広島市立大学 芸術学部 油絵専攻 卒業

1994

兵庫県生まれ

個展

2023

太平洋は銀製(ヒロセコレクション / 広島)

2022

回る羽根を切る / 貼る (MONO.LOGUES / 東京)

2021

私の知るX夫妻について (gallery RYO / 東京)
記憶のないカウボーイは庭にいる (gallery G / 広島)

2020

しらない土地のしらない人々 (広島芸術センター / 広島)

2019

顔のないゆうれい (本と自由 / 広島)

主なグループ展

2023

ことばとイメージ(広島T-SITE 蔦屋書店 / 広島)grid2 (biscuit gallery / 東京)
現代美術家たちの表現(土のミュージアムSHIDO / 兵庫)
kɯβzɨβɾe^崩れ(デカメロン / 東京)

2022

grid (biscuit gallery / 東京)Inch by inch (タメンタイ鶴見町ラボ / 広島)
ひとりとひとりの間に (ARTDYNE / 東京)
牡蠣コレクション (Hiroshima Drawing Lab / 広島)

2021

佐藤国際文化育英財団 第30回奨学生美術展(佐藤美術館 / 東京)
SLANGS (WHAT CAFE / 東京)
Azure Hiroshima Base オープニング記念展示 (Azure Hiroshima Base / 広島)

2019

すがたなき森(広島芸術センター / 広島)
1km以内の人物画(Atmosphere / 東京)

賞歴・助成

2020

公益財団法人佐藤国際文化育英財団 第30回奨学生

作品収蔵

2022

ヒロセコレクション